その日は大学の校内を歩いていた。そこで知らない女の子と会い、挨拶だけして通り過ぎる。とても可愛く明るい子でどうやら最近編入してきたみたい。どおりで知らない子だと納得した。どこか関西訛りのイントネーションをしていた。俺は昼ご飯を食べて、午後の講義に備えた。受けたい講義がありその教室に向かったが、場所がわからずしばらく校内をうろついていた。目的の教室をマップを使って探そうと思い、一旦それまで近くの別の教室に行き一番後ろの席に着いた。急いでイスに座りマップを開いて場所を探していると、ふと声をかけられた。横にいたのはさっき会った女の子だった。偶然会ったその子はこの教室の講義を受けていた。「また会ったね」と声をかけられ、続けて「さっきも忙しそうにしてなかった?笑」と笑っていた。俺は最初誰かわからなかったけどその笑顔ですぐにさっきの女の子と気づき少し可笑しくなった。「行きたい教室があるんけど、ちょっと場所がわからんくて今マップで探してるんよね、、」俺は焦って返答した。その時、教授が俺を指して発表を促した。この教室はどうやら英語の教室みたいで、英語の発音を練習していたらしい。俺は講義の内容を把握してなかったためとんちんかんな発言を一番後ろの席から大声で言ってしまった。女の子は笑ってた。さすがに授業に遅れると思い、適当にその場をやり過ごし発表を終え、この教室を後にした。その時女の子の連絡先をどうしても聞きたかった、けど、その子の名前も知らないのとたまたま2回会っただけということでいきなり連絡先を聞くのが憚れれた。折衷案として「講義終わったら俺またこの教室来るからよかったらまた会おうや」と口頭で伝えた。荷物もしれっと半分ほど置いてまた戻る口実を作ってた。女の子は「ほんと、わかったよ」とだけ言った。離れ際、少し腕を握られドキッとした。
結局その後5〜10分ほど本来行きたかった教室を探したけど見つからず、内心”今日はもう行かんでいいかな〜”と思ってた。すると、さっきまでいた教室から人がたくさん出てきた。どうやら英語の講義は早々に終了したらしい。俺は無意識にさっきの女の子を探してた。探してると視界の外から右腕に飛びついてくる感覚があった。女の子だった。「一緒に歩こ!」と言われ「そうだね、なんか俺が行きたかった講義の場所結局わかんなくてもう今日は行かんでいっかなって思ってたとこだわ笑」と聞かれてもいないことをベラベラ話して、この嬉々とした気持ちを紛らわしてた。
女の子は特に気にするでもなく2人は校内を歩いた。話してると、彼女がここに来たのはつい1ヶ月前くらいで、そこから大学の最終手続き、引っ越し作業、家具家電の準備、をしていたらしい。明るく人懐っこく2人はすぐに打ち溶けた。大学の校内の空き地に簡易遊具があり、そこのうんていで何人かの男が遊んでた。女の子はそのうんていのところに行き「私も遊ぶ!」と言った。俺は最初置いてきた荷物を撮りに行くと伝えさっきの教室に戻った。戻ってるときに少し雨が降り出し、荷物を取ることには雨はどしゃ降りになってた。女の子のことが少し心配になり、教室の窓から空き地を見ると、その近くで民家が火事になっていた。相当でかい火事だった。俺は全ての荷物を放り出して、空き地に向かって走った。頭の中が女の子のことでいっぱいになってた。彼女はまだうんていの近くにいたままだった。急いで駆け寄り彼女を抱き抱えると、力の限り家事現場から離れた。彼女は「どうしたの?」と言ってきた。どうやら火事のことに気づいていないようだった。火事のことを伝えると「うわ!大変!」とビックリしていた。火事はその民家以外にもいくつかあって2人は驚きながら走って避難した。移動中互いに腰に手を回しっぱなしで、そん手はずっと離れることはなかった。どしゃ降りの中、近くには複数の火事現場、俺は名前もまだ知らない陽気な女の子と目的地も決まってないままただひたすら走ってた。なぜか心はずっとわくわくが止まらなかった。それはきっと彼女もそうだろうと期待していた。この先もっと彼女と時間を共有したいと思ったとき、俺の眠気は消えてきた。「あっ、これは夢か、てことはこの大学もこの雨も火事も、そして何より横にいるこの子も全て架空の存在なのか、そっか、仕方ない、起きるか。いや、けどもう少しこの世界にいたい」そんな葛藤をおそらく10分ほどした後、ようやく俺は目覚めた。今日もごく平凡な1日が始まりそうだった。布団を片付けるとき、少しだけ右腕に柔らかい感触が残ってる気がした。